からだにいいこと
カカオポリフェノールの肌への効果は?チョコレートの美容効果とは
2025/10/27

「チョコレートは肌に悪い」「食べると太る」。かつてはそう考える人も多かったようですが、近年はそのイメージが大きく変わりつつあります。健康志向・美容志向の流れの中で注目されているのが、意外にもチョコレートなのです。 チョコレートに含まれるカカオ由来の成分「カカオポリフェノール」には、抗酸化作用や肌の潤い保持作用など、美容にうれしい効果があることが研究で報告されています。 この記事では、研究データからチョコレートの美容効果をわかりやすく解説していきます。
目 次
肌にダメージを与える活性酸素
現代社会は、肌にとって過酷な環境にあふれています。紫外線、冷暖房による乾燥、不規則な生活やストレス…。これらが積み重なることで体内では「活性酸素」が過剰に発生し、肌の細胞を傷つけて老化を加速させます。これがいわゆる「酸化」によるダメージであり、シミ・シワ・たるみの原因となります。
こうした環境のなかで、「酸化」による肌ダメージから守るために、スキンケア化粧品に加えて、内側からのケア、つまり「インナービューティー」への関心が高まっています。こうした背景から、抗酸化作用を持つ食品やサプリメントが注目されるようになり、その一つとしてチョコレートのカカオポリフェノールが研究されてきました。

カカオポリフェノールの抗酸化作用
カカオポリフェノールは、赤ワインやお茶にも含まれるポリフェノールの一種で、特に強い抗酸化作用を持ちます。抗酸化作用とは、体内で発生した余分な活性酸素を無害化し、細胞や血管、肌へのダメージを防ぐはたらきがあります。
肌は紫外線を浴びたり、ストレスを感じたりするだけで活性酸素が発生します。その量が増えすぎると、コラーゲンやエラスチンが分解され、ハリや弾力を失ってしまいます。ここにカカオポリフェノールが作用することで、シミやシワの原因を防ぎ、若々しい肌を保つ助けになると考えられています。
美容を意識する方にとって「抗酸化作用」は重要なキーワード。カカオポリフェノールは、まさに取り入れてほしい成分なのです。

カカオポリフェノールの肌への効果
カカオポリフェノールの美容効果は臨床試験でも確認されています。ドイツの研究チーム(Heinrich ら, 2006)による臨床試験では、カカオポリフェノールを多く含むカカオ製品を12週間にわたり継続摂取した女性の肌の状態が詳しく評価されました。(※1)
研究の背景には、現代人が日常的にさらされる紫外線ダメージがあります。紫外線は肌の老化を早める「光老化」の主要因であり、シミやシワ、乾燥を引き起こす大きな要素です。そこで、紫外線に対する抵抗力を高める「食べ物」があれば、美容や健康にとって大きなメリットとなります。
試験の結果、カカオポリフェノールを多く含む製品を摂取したグループでは、紫外線を浴びた際に生じる紅斑(肌の赤み)が明らかに軽減されました。つまり、カカオポリフェノールを多く含む食品を日常的に摂取することで紫外線に対する耐性が高まり、肌を守る力が強くなることが示されたのです。さらに、肌の角層における水分保持力も改善し、乾燥しにくい状態が続くことも確認されました。
これらの結果は、単に「チョコレートはおいしい」だけでなく、美容食品としての新しい可能性を示しています。
(※1)Heinrich, U.; Neukam, K.; Tronnier, H.; Sies, H.; Stahl, W., Long-term ingestion of high flavanol cocoa provides photoprotection against UV-induced erythema and improves skin condition in women. J Nutr 2006, 136, 1565-9.
アーモンドチョコレート研究が示す「ターンオーバー改善」
肌が美しく健康に保たれるためには、外側からのスキンケアだけでなく、肌本来の再生リズム(ターンオーバー) が正常に働くことが不可欠です。ターンオーバーが乱れると古い角質が肌表面に残り、くすみ、さらには炎症やニキビといった肌トラブルにつながってしまいます。
ストレスや不規則な生活、乾燥などによってターンオーバーが乱れがちであり、身体の内側からのアプローチが求められています。

この課題に対して行われたのが、アーモンド入りチョコレートを対象とした臨床研究です。健康な女性を対象に、一定期間にわたってアーモンド入りチョコレートを毎日摂取してもらい、肌の変化を観察しました。
「角質の状態」「炎症の指標」「主観的な肌状態のアンケート」の3つのことについて評価しました。まず角質状態の指標である多重剥離度を測定したところ、アーモンド入りチョコレートを摂取したグループではこの値が有意に低下しました。これは、肌の角質が均一にはがれるようになり、ターンオーバーが整ってきたことを意味します。また、血液検査で確認されたTARC値( Thymus and Activation-Regulated Chemokine :炎症マーカー)も低下しており、肌の炎症反応が軽減されていることがわかりました。さらに被験者へのアンケートでも、「肌の調子が良い」と感じる人が増加したと報告されています。
こうした結果は、アーモンドに含まれるビタミンEや食物繊維と、カカオポリフェノールとの相乗効果によるものと考えられています。つまり、アーモンド入りチョコレートは肌の生まれ変わりを助け、炎症を抑える可能性を示したのです。
チョコレートには多くのポリフェノールが含まれている
これまでの研究から、チョコレートやカカオ製品に含まれる成分が肌に良い影響を与えることがわかってきました。しかし、その効果を理解するためには、まず「チョコレートがどのような成分を豊富に含んでいるか」を知る必要があります。実際に、国内外の研究によってチョコレートのポリフェノール含有量とその特性が詳しく明らかにされています。
フランスの研究者 Scarlbert と Williamsonが行った、食事由来のポリフェノール摂取量と体内での利用効率に関するレビューの中では、果物やお茶、ワインと並び、チョコレートは主要なポリフェノール供給源の一つであることが示されています。つまり、食生活にチョコレートを取り入れることで、継続的に抗酸化成分が摂取できる可能性があるということです。(※2)
また、日本の研究グループ(Natsume ら, 2000)は、チョコレートの原料であるカカオリカー(カカオマス)、ココア、チョコレートに含まれるポリフェノールを詳細に調べました。その結果、カテキン、エピカテキン、プロシアニジン類といった多様なポリフェノールが豊富に存在することが明らかになっています。また、製造過程(発酵や焙煎など)によって含有量は変化するものの、最終的な製品としてのチョコレートでも十分な量が保持されていることが確認されました。(※3)
さらに Hatano ら(2002)の研究では、カカオリカーから複数の新しいプロアントシアニジン配糖体が単離され、その抗酸化作用が極めて強いことが示されています。(※4)こうした成果は、チョコレートに含まれるポリフェノールが抗酸化作用を持つ成分として注目される一因となっています。
これらの知見を総合すると、チョコレートはポリフェノールを豊富に含み、そして、そのポリフェノールこそが、美容研究で示されてきた「肌の潤い保持」「紫外線ダメージ抑制」「ターンオーバー改善」といった美肌効果の根拠になっているのです。
(※2)Scalbert, A.; Williamson, G., Dietary intake and bioavailability of polyphenols. J Nutr 2000, 130, 2073s-85s.
(※3)Natsume, M.; Osakabe, N.; Yamagishi, M.; Takizawa, T.; Nakamura, T.; Miyatake, H.; Hatano, T.; Yoshida, T., Analyses of polyphenols in cacao liquor, cocoa, and chocolate by normal-phase and reversed-phase HPLC. Bioscience Biotechnology and Biochemistry 2000, 64, 2581-2587.
(※4)Hatano, T.; Miyatake, H.; Natsume, M.; Osakabe, N.; Takizawa, T.; Ito, H.; Yoshida, T., Proanthocyanidin glycosides and related polyphenols from cacao liquor and their antioxidant effects. Phytochemistry 2002, 59, 749-58.
まとめ
これまでの研究から、チョコレートは嗜好品というだけでなく、カカオポリフェノールを豊富に含む美容食品としての側面を持つことが明らかになってきました。紫外線による肌ダメージを抑制し、潤いを保ち、ターンオーバーを整えるなど、美容にうれしい効果が科学的に裏付けられています。
その効果を実感するためには、食べ方の工夫も大切です。カカオ含有量の高い、高カカオチョコレートを選び、1日25g程度を目安に、毎日少しずつ継続して摂取することが推奨されます。カカオポリフェノールは体体内に蓄積されないため、習慣的に取り入れるとよいでしょう。









