
クーベルチュールはフランス語で「couverture(クヴェールチュール)」といい、毛布や覆うものを意味します。英語ではカバーする、という意味をもち、カバーするためのチョコレート、製菓用として使うのに適した特性のチョコレートです。
目 次
クーベルチュールの言葉の意味

日本語ではクーベルチュールと呼ばれていますが、正しくはフランス語で「couverture(クヴェールチュール)」といい、毛布や覆うものを意味します。英語だと「カバー」のことなので、つまりクーベルチュールは「カバーするためのチョコレート」を指します。
クーベルチュールとは
クーベルチュールは製菓用として使うのに適した特性のチョコレートです。
例えば、ボンボンショコラやケーキのコーティング、デザートやパフェに施す繊細で華やかなチョコレートの飾りつけなどにも使われます。クーベルチュールの主な材料は、カカオマス、ココアバター、砂糖で、ミルクの場合は粉乳が加わります。その他、乳化剤や香料が含まれる場合もあります。
ホワイトのクーベルチュールはココアバター、砂糖、粉乳が主な材料で、非脂肪カカオ分(カカオ原料のうち脂肪分以外の部分)が入っていないため、色は白~黄色です。乳化剤や香料が入る場合もあります。
この項では、クーベルチュールとはどのようなものなのか解説していきます。
チョコレートやチョコレート菓子の材料

クーベルチュールはチョコレートやチョコレート菓子の材料となるもので、主にパティシェやショコラティエなどプロの人たちが使うことが多い製菓用材料です。以前は大きな板状のものが主流で削る手間がかかりましたが、今は小さなコイン型やダイス形などもあり、計量してそのまま使用することができます。容量は1kg、2kg、5㎏が一般的です。また、最近は消費者向けの製菓材料店などで手に入るようになり、100g、200gなど家庭で使用しやすい小売りサイズの製品もあります。
ココアバターの含有量が多く、薄くコーティングできる
クーベルチュールの大きな特徴は、ココアバターの含有量が多いためチョコレートの粘性が低く、何かを薄くコーティングすることができるという性質です。例えば、ボンボンショコラのうちエンローバータイプと呼ばれるチョコレートにはクーベルチュールが適しています。他には、ケーキの表面を覆ったり、ビスケットやドライフルーツをコーティングしたり、パフェなどデザートの飾りつけにも使う場合があります。
クーベルチュールと板チョコレートの違い
クーベルチュールと一般的な板チョコレートは成分の違いがあり、クーベルチュールには国際的な規格も存在します。ここでは、クーベルチュールの成分をさらに詳しく見ていきます。
国際規格(CODEX)によるクーベルチュールの定義
CODEX(コーデックス)は、世界的に通用する食品の国際規格です。ここではクーベルチュールについて、ココアバターが31%以上、無脂カカオ固形分2.5%以上でその合計である総カカオ分が35%以上になるものと定義しています。国際的にはこの条件をクリアしているものをクーベルチュールと呼ぶことができます。但し、日本ではクーベルチュールという名称についての規格がなく、日本独自の規格基準「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」においてもクーベルチュールに関する規約はありません。
カカオ分とは「カカオ固形分+ココアバター」のこと
クーベルチュールは、カカオ分35%~100%近いものまで様々なタイプがあります。この「カカオ分」というのは、カカオ固形分(カカオマスやココアパウダーなど)とココアバターの合算です。さらに、もとからカカオ豆に含まれているココアバター以外にも、後からココアバターを追加(追油)することで、チョコレートのなめらかさが増し、流動性が高くなります。後から追油するココアバターは7~14%程度です。
クーベルチュール≠高級チョコレート
日本では、クーベルチュールが高い価格で販売されていることから、高級チョコレートと思われていることがあります。ただ、クーベルチュール≠高級チョコレートではありません。実際は、ココアバターの価格が高いため、ココアバターを多く追油する製品や、植物油脂を使わずにココアバターを用いた製品は価格が高くなる傾向があります。また最近では、カカオ豆の品種や産地にこだわるものもありますので、それが価格に影響しているケースもあります。
クーベルチュールチョコレートの分類
チョコレートは原材料の配合によって主にダーク、ミルク、ホワイトに分けられます。ここではダークとミルクのクーベルチュールについて紹介します。
ダーククーベルチュール
ダーククーベルチュールは、スイートやビターと呼ばれることもあります。カカオ分以外のほとんどが砂糖のため、カカオの風味をシンプルに味わえるタイプです。
例えばカカオ分60%の場合は、残りの約40%が砂糖、70%カカオの場合は残り約30%が砂糖ですので、高カカオ分製品のほうが苦味が強くなる傾向があります。(製品によりレシチンや香料が1%未満入ります。)作業性としては、カカオ分55~60%のものが扱いやすく、70%を超えると固まる力が強くなり作業が難しく感じるでしょう。
クーベルチュールの多くは、品種や産地が異なるカカオ豆をブレンドして作られています。様々な種類を組み合わせることにより、複雑で奥深い味わいに繋がります。つまり、カカオの選定とそのブレンドによってメーカーごとの特徴や製品ごとの個性が出るというわけです。
一方で、近年はシングルビーンと呼ばれる、単一の国やエリアのカカオ豆で作るクーベルチュールもあり、産地ごとの個性を商品作りのアクセントにすることもできます。
ミルククーベルチュール
ミルククーベルチュールは乳製品を加えたクーベルチュールです。使用されるのは全粉乳や脱脂粉乳など粉末状の乳です。粉乳が入るとチョコレートの粘度が上がるため、追油分のココアバターを増やして流動性を高めます。乳製品特有のコクがあり、風味も色合いもやさしくなります。
味わいの特徴やバリエーション
そのほか、コーヒーやキャラメル、ベリーなどフレーバーのあるものや、オーガニックにこだわった製品など、豊富な種類のクーベルチュールがあります。メーカーごとに味わいなどの特徴は異なり、どのような用途に使うかによりたくさんの種類の中から選ぶことが可能です。
業務用クーベルチュールメーカー
ここでは、業務用クーベルチュールを作っている大手メーカーやブランドについて紹介します。
カレボー(ベルギー)

1911年にベルギーでチョコレート事業を創業し、世界で初めてクーベルチュールを作ったとされるのがカレボーです。カカオバリーと合併した現在も、スイスに本拠地を置くバリーカレボーグループの中心的なブランドとして、発祥の地であるベルギーの都市ウィーゼの製造工場で、創業以来ずっと変わらない伝統を守り続けています。
代表的な商品のひとつに、「3815 クーベルチュールダークチョコレート」があります。カカオ分は58%、日本人の嗜好に合わせて作られたダークチョコレートです。非常に高い流動性が特徴です。
カカオバリー(フランス)

カカオバリーは1842年にフランスで設立されたチョコレートメーカー。1996年にカレボーと合併して社名がバリーカレボーとなり、本拠地をスイスに移しました。
カカオバリーはフランスのブランドとして、チョコレートやコーティング、フィリング、その他カカオ製品など多種多様な製品を手掛けています。
カカオバリーの代表的なクーベルチュールはヘリテージシリーズのクーベルチュール ピストール ミ・アメール58%です。丁寧にローストしたカカオの風味、植物性の柔らかい酸味が持ち味です。
ヴァローナ(フランス)

1922 年にフランス・ローヌ地方で創業以来、カカオの味わいにこだわり続け、世界中の現地スタッフと二人三脚でカカオ栽培を行うとともに、独創的なアイデアと技術により、最高のチョコレート素材へと昇華させてきました。美食の世界をけん引する世界中のトップシェフなど、プロフェッショナルたちから認められています。
さらに、チョコレート専門技術校 「エコール・ヴァローナ」にて多彩な研修プログラムを提供すると同時に、洋菓子の世界大会“クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー”を創設し、日本でも実行委員を務めるなど、チョコレートの芸術性・文化性を高める活動に取り組んでいます。
ヴァローナは、環境や社会に配慮した事業活動を行い、説明責任や透明性など厳しい基準を満たしたサステナブル(持続可能)な企業のみに与えられるB Corporation®を取得しています。
多くのパティシエやショコラティエに支持されているチョコレート「マンジャリ」は、マダガスカル産カカオを使った、カカオ分64%のシングルオリジンのブラック・クーベルチュール・チョコレート。フランボワーズやスグリなど、赤いベリー系の華やかな酸味と明るい色合いが特徴です。
ショコラトリー ドゥ オペラ(フランス)

ショコラトリー ドゥ オペラは、世界で初めてプロフェッショナル向けにシングルオリジン・クーベルチュールを開発した家族経営のメーカーです。3代目のオリヴィエ・ド・ロワジー氏がカカオ豆のテロワールと農園の個性を表現したクーベルチュールを作りたいという想いから、1995年に設立しました。
シングルオリジンを集めた「ピュアプランテーション」シリーズに属するカカオ分70%の全製品の配合構成は、カカオ分70%、ココアバター分44%とすべて同じです。製品ごとに比率を確認する必要がないため作業性が高く、多くのプロフェッショナルより支持されています。
中でも、ベネズエラ産の厳選されたカカオ豆を使用し、複雑で力強いフレーバーが特徴の「カルパノ」は、世界中で最も支持される製品の1つです。ココナッツ、ラズベリー、ヘーゼルナッツやオレンジとの相性が良く、コーティングや型抜きに適した「カルパノ70%」、ガナッシュやクリームに最適な「カルパノ62%」と、異なるカカオ分で2つの製品ラインナップがあります。
明治(日本)

1926年に明治ミルクチョコレートを発売、その後1981年に業務用チョコレート原料の発売を開始しました。日本の菓子市場に適したチョコレート風味を追求し、ダーク、ミルク、ホワイトチョコレート以外にもフルーツ風味など幅広いラインナップを展開しています。
近年は、カカオ産地にて農家支援活動や品質向上に向けた取り組みを積極的に行っています。カカオ豆原料にこだわった香り豊かな業務用クーベルチュールのラインナップとして、「明治 ザ・カカオプロフェッショナルズ」があります。これは、プロのためのスペシャリティチョコレートで、カカオ自体の品質を極め、産地や品種の異なるカカオの個性を最大限引き出したシリーズ。その中のひとつ「スパイシーフルーツ」は、ドミニカ共和国産カカオを使ったカカオ分65%のクーベルチュール。シナモンや木のようなスパイシーな香りと、干しブドウのような凝縮感、果実の香りが特徴です。
<まとめ>クーベルチュールの特徴を知ってチョコレートの違いを楽しもう
クーベルチュールは、製菓用原料として扱う際に重視されるなめらかさや作業のしやすさがあるほか、そのまま食べてもおいしいチョコレート。もちろん家庭でチョコレートのお菓子作りにもぴったりです。国内外には様々なクーベルチュールメーカーがあります。各メーカーの違いや製品ごとの特徴などを把握し、作りたいチョコレートやお菓子に合わせて選ぶと、より本格的な味わいに仕上げることができるはず。様々な使い方を楽しんでみてくださいね。
※関連ページ:チョコレートの分類・種類は?原材料や製造方法でみる違いと特徴